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宝永町248番地 第2話 [Wessay]

宝永町商店街

高知市は高知平野の中央に位置する、南北に細長い浦戸湾を包み込む形になっている。
元々は「河内」という地名であったくらいであるから、幾筋もの河が高知市を通過して浦戸湾に注ぐ。
宝永町は高知市の中心部からやや下流にある小さな住宅街である。
大戦では高知市も空爆されたが、ぎりぎり免れたため狭い路地の中に古い民家がひしめき合っている。

そんな下町の東西にのびる商店街にある酒屋にぼくは生まれた。
店は商店街の西端の角にあり、酒屋だから北向きに構えている。
商店街の通りは一応舗装されているが車がすれ違うことができないため一方通行だ。
そのたった4メートルほどの幅の道路を挟んだ向かいは神社だ。
それほど大きい神社ではないが参道と境内があって本殿の裏には小さな杜もある。

商店街はうちの店から東に200メートル近く続いている。子どものぼくにはとても長い。
しかし長いだけでアーケードもなく比較的小さな店が数珠つながりになっているだけだ。
その頃はまだスーパーマーケットもなかった。並んでいる店も雑多だった。

うちの隣は「みかん水屋」だ。というよりも松本さん家のみかん水工場だ。店の裏で瓶詰めしている。
みかん水をオレンジジュースと翻訳してはいけない。そんな上等なものじゃない。
サッカリンで甘みを付けたいわゆる「砂糖水」にうっすらと柑橘系の香りが足されているようなものだ。
一応みかんの絞り汁が含まれていたのかもしれないが、そんな細かいことはぼくたちは気にしない。
安くておいしければいいのだ。
みかん水はおいしかったが、さすがに子どもがしょっちゅう飲めるほどの値段ではない。
自分の家でもジュースは売っているのだから、なおさら飲む機会は少なかった。

その隣は床屋、喫茶店。そしてアイスクリーム屋と続く。ここも工場だ。
主力商品は1本5円のバナナアイス。ぼくたち子どもにとってその安さはかけがえがなかった。
そしてそれは、味がバナナというよりも形と色がバナナなのだった。
バナナ型のなかばシャーベット状のアイスにやや扁平な木の棒が刺さっている。
刺さり方はでたらめで、斜めに刺さっているもの、アイスの上まで突き抜けているものもある。
どんな刺さり方でも気にしない。安くておいしければいいのだ。

もちろん八百屋、魚屋、肉屋、食料品店、衣料品店、電気屋、文房具屋、ありとあらゆる店が並んでいた。
だからスーパーなんかなくても良かった。
駄菓子屋はもちろんあったが、唯一不満だったのはおもちゃ屋がないことだ。
おもちゃを買うには別の商店街か繁華街に行くか、デパートに行くしかなかった。
おもちゃは大人に買ってもらうしかないが、眺めるということが気軽にできないのは不満だった。

そしてぼくは後におもちゃ欲しさに大変なことをしてしまう。

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